入間市・飯能市で目撃情報。「もはや狭山には来ないだろう」は無い。
2025年、全国各地で「熊(ツキノワグマ)」の出没情報や被害のニュースが過去にないほど急増しています。狭山市内での目撃情報は現時点(2025年11月)ではありませんが、お隣の飯能市や入間市、秩父、小鹿野町など埼玉県西部では目撃情報が多発しており、決して他人事とは言えない状況です。
埼玉県ではこの状況を見て「埼玉県ツキノワグマ出没マップ」を作成し、住民に注意喚起を行っています。このマップを見ると、狭山市の目と鼻の先まで目撃情報が近づいている事が分かります。

最も近くでの目撃情報
2024年7月1日に、飯能市の入間川河川敷近くで19時半ごろに熊の目撃情報があり、ここは加治中学校のすぐ近くでした。次に近い目撃情報は、2025年4月26日に入間市と飯能市の堺で、駿河台大学を抜けて上谷ヶ貫に抜ける道路上で目撃されています。また直近の10月9日の21時ごろには、日高と飯能の堺、武蔵台(武蔵野森病院付近)で、10月18日にも駿河台大学西側のJR八高線沿いで、電車の運転手が12:50ごろ熊を見かけています。
なぜ熊は人里に下りてくるのか? 3つの主な理由
熊が人里近くに現れる背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。
理由1:冬眠前の「食いだめ」と「ドングリの大凶作」
これが、今年(2025年)の出没が特に多い最大の理由とされています。
- 熊は冬眠前に太る必要がある 熊は冬の間、穴などでほとんど動かずに過ごす「冬眠」に入ります。その長い冬を越すため、秋は熊にとって最も重要な季節。冬眠に必要なエネルギー(脂肪)を蓄えるため、必死になってエサを探し、食べ続けます。これを「食いだめ(飽食)」と呼びます。
- 主食のドングリが「大凶作」 熊の秋の主食は、ブナやミズナラなどの木の実(ドングリ=堅果類)です。しかし、埼玉県によると、今年(2025年)の埼玉県内のブナの実は「大凶作」であると予測されています。
- エサを求めて人里へ 山の中に食べるものが無ければ、熊は生きていくためにエサを探して行動範囲を広げざるを得ません。その結果、人里にある「食べ物の匂い」に引き寄せられてしまうのです。
人里にある熊のエサとは?
- 収穫されずに放置された柿や栗、りんごなどの果樹
- 畑の農作物(トウモロコシ、イモなど)
- 屋外に放置された生ゴミ、ペットフード
- お墓のお供え物
理由2:人と熊の「境界線」の変化
昔と今とでは、人と熊が住む環境の境界線が曖昧になっています。
- 里山の荒廃: かつては人が薪(まき)や炭のために手入れをしていた里山(集落と奥山の間にある森林)が、利用されなくなり荒廃しています。
- 耕作放棄地の増加: 担い手不足などで耕作されなくなった畑や田んぼが、草木が生い茂る「薮(やぶ)」になっています。
これらの場所は、熊にとって「身を隠しやすく」、奥山から人里への通り道、あるいは一時的な潜伏場所になってしまい、人と熊の距離が物理的に近づいています。
理由3:熊の「個体数」と「学習」
- 個体数の増加: 一部地域では、過去の保護政策などにより、熊の生息数そのものが回復・増加傾向にあります。
- 「人を恐れない熊」の出現: 人里で簡単に美味しいエサ(生ゴミや果樹)を手に入れた経験を持つ熊は、「人里=エサ場」と学習してしまいます。特に、そうした環境で育った若い熊は、人間を恐れず、繰り返し人里に現れることがあると指摘されています。
冬眠しない熊も? 冬になっても注意が必要
「冬になって冬眠すれば安心」と思いがちですが、注意が必要です。
秋に十分なエサを食べられず、冬眠に必要な脂肪を蓄えられなかった熊は、冬眠の時期が遅れたり、冬眠に入ってもすぐに起きてしまったり、最悪の場合「冬眠しない」個体も現れると専門家は指摘しています。 エサを求めて冬の間も活動する可能性があるため、引き続き警戒が必要な場合があります。
予想される狭山市への出没ルート
熊は山や森を伝わりながら餌を求めて移動しています。天覧山周辺は熊の生息地域となっている事が予想されるため、そこから宮沢湖を抜ければ久邇カントリークラブがあり、その南側の飯能ゴルフ倶楽部を伝って行くと、そこはもう笹井です。また北側の畑を伝わっていけば、智光山公園もすぐです。

入間市方面からだと、仏子駅裏の山を抜けてくると高倉方面に出て、霞川沿いに行くと鵜ノ木、稲荷山公園へとつながります。
狭山市に住む私たちも、無関心ではいられません。熊との不幸な遭遇を避けるために、以下の点を心がけましょう。
1. 熊を「寄せ付けない」対策(市内でも重要)
熊が万が一、住宅地近くに迷い込んだとしても、「ここにエサはない」と学習させることが重要です。これはカラスやハクビシンなど、他の野生動物対策にもつながります。
- 生ゴミの管理: 生ゴミは収集日の朝に出す。屋外にゴミ箱を置く場合は、蓋がしっかり閉まるものを選び、荒らされないように管理する。
- 果樹の管理: 庭に柿や栗、果物の木がある場合、収穫できるものは早めに収穫する。収穫しないものや、地面に落ちた実は放置せず、適切に処分する。
- ペットフード・米ぬか等: 物置や屋外にペットフードや米ぬか、肥料などを匂いが出る状態で放置しない。
2. 山間部(秩父・飯能など)へ行く際の対策
ハイキングやキャンプ、紅葉狩りなどで、熊の生息が確認されている地域(秩父、飯能、奥多摩など)へお出かけの際は、最大限の注意が必要です。
- 情報を確認: 出かける先の自治体(埼玉県、飯能市、秩父市など)が発表している「熊出没情報」を必ず確認する。
- 音で知らせる: 熊鈴やラジオ(音量大きめ)を携帯し、自分の存在を熊に知らせる。(※熊は基本的に臆病で、人を避ける性質があります)
- 早朝・夕方は避ける: 熊の活動が活発になる早朝(薄暗い時間)や夕方の行動はなるべく避ける。
- 「熊の痕跡」に注意: 新しいフンや足跡、木の幹の爪痕を見つけたら、すぐに引き返す。
- ゴミは必ず持ち帰る: 食べ物の匂いを残さない。
3. もし熊に出会ってしまったら
- 慌てない・騒がない: 大声を出したり、驚かせたりしない。
- 背中を見せて逃げない: 熊は逃げるものを追う習性があります。
- ゆっくり後退する: 熊から目を離さず、静かに、ゆっくりと後ずさりして距離をとる。
とにかく熊は「餌を探している」という目的があるという事を念頭に入れ、外出の際には細心の注意を払う必要が出てきました。対策を講じても簡単には収束できない自然の流れでもあります。共存という考え方も出てくるのかもしれません。
関連情報リンク集
熊に関する最新情報や、詳しい対策については、公的機関の情報を確認してください。
